2学期に始めたいこと

勉強トピックス

高校数学

高校数学 場合の数・確率の勉強

 大学受験生や高校1年生で場合の数・確率が苦手という生徒は多いように感じます。私自身を思い返してみても、高校時代は苦手でした。けれども大学へ行き統計力学や集団現象を勉強したり研究分野に選ぼうと考えるようになってから、現代におけるこの分野の重要さを痛感して、改めて勉強しなおしたのを思い出します。

 この分野、教科書や問題集では順列(P)や組み合わせ(C)の使い方が目立っているように思います。しかも、それぞれの問題がそれぞれの考え方をしているように見えて、問題ごとに考え方があるように見えます。またそのパターンも少なくありませんから「覚えきれないよ!」とか「どのパターンを使うか選べない!」とか「同じパターンに見えたのに、なんで違うんだ?」とか、こんな感じで難しく感じたりしている人もいるようです。

 しかも、これだけではありません。うまく教科書や問題集でPやCの使い方のパターンをマスターしたと思っても、これらの問題と同じような考え方で解ける問題が出題されるのは中堅大学くらいまでで、模試や中堅大以上(偏差値で言えば52くらい、芝浦工大くらいから上でしょうか)の入試ではどのパターンにもならない場合が多いのですから、どう勉強してよいのか迷ってしまうのも頷けます。

 どうしてこんなことが起こるのかと言えば、おそらく理解や練習のしかたが根本から間違っているからで、それは教科書や問題集の作りから、それを学ぶ高校生たちに注目点がズレてしまう人が多いためだと思います。

 数学の基礎力として身に着ける事柄の1つに、視覚化する技術というものがあります。自然現象や社会現象を含め、ある事柄が起こる原因は「もの」「こと」「関係性」にあると考えておりますが、「もの」や「こと」は日常的に使う言葉でも十分に取り扱えるのですが「関係性」となると、言葉で取り扱うとかなり不十分になってしまいます。また、正確性というものも言葉の苦手とすることでしょう。
 この関係性や正確性の記述や観察に数学というのが大変に利点を持つのですが、いかんせん言葉の世界の日常にいる私たちには、この手がものが捉えにくいものです。
 これを捉えられる力を「数学のセンス」とかいうのかもしれませんが、私は数学を使い、教える人間として「センス」などという無責任なことは言いたくはありません。
 数学では、これらを捉えられるようにする技術として視覚化という方法をよく使います。単純にグラフや表、図などがそれです。これらは、これを使えば解けるという、解くための方法ではなく、目に見えるようにまとめるための分析ツールです。これらを使って視覚化すると、関係性や範囲の境界が見やすくなるのです。小学生で多くの子が速さの問題で教わる「み・は・じ」なども視覚化のツールの1つという意味では、算数で教える価値があるものと思っています。

 高校での場合の数・確率では、理解の多くを「ことば」の置き換えに頼っているように思います。例えば順列は「nこの中からrこ選んで、並べる」とかです。このような言葉への置き換えも数学では重要な技術の1つですが、関係性を把握するうえでは心もとないものです。そのため、中学では場合の数を視覚化するものとして、樹形図や表を学んだはずです。
 場合の数や確率というのは、事象の観察は樹形図や表で行い、ここから法則性や関係性を読み取り、式にする。というのが適切な学び方と考えています。観察を基準にしていますから、事象そのものを見失うことは少なくなります。順列Pや組み合わせCは、あくまで「これら樹形図や表を式にしたもの」というものです。
 ただ、樹形図や表というのは全部書くのはおっくうですし、現実的ではありません。だから実際の練習では、問題文から事象を樹形図や表に整理しますが、この整理の目的は書き上げるのではなく、法則や関係性を読み取ることですから、これらが把握され次第、式をつくり解き進めるべきでしょう。入試などでよくあるのは、把握を試みていたら樹形図が書きあがってしまったということです。この場合は、数えればよいのですから、別に問題はないでしょう。また、樹形図や表などをどうしたらよいか迷う場合は、個々の事象の具体的な書き出しから始め、書き出しながら、どんな樹形図や表にできるかを探り、それが見出され次第、樹形図や表を書き始めるという手の付け方になるでしょう。

 高校生の学びには、この場合の数・確率の事象を観察する根本である樹形図や表が足りていないと思うのです。そして、そのような練習を行ってきていますから樹形図や表が中学生レベルのまま進歩していない高校生も多くいます。高校生は高校生なりの樹形図や表を身に着けるべきです。といっても、これらは中学生のものに2から3つの要素を加えただけで事足りるのですが。
 もちろん言葉の置き換えによる解釈が必要ないわけではありません。言葉による解釈に加え、樹形図や表を中心にした勉強を進めると、場合の数・確率はほとんどの問題で自然に解けるようになります。また、全問正解できる問題が多いことにも気づくでしょう。苦手な単元から、頼りにできる得点源になります。

 普段の学習が適切な考え方で行われていることの大切が顕著になる単元ですね。

(スクラムnext 田中克典)

このページのトップヘ