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勉強トピックス

高校数学

高校数学 2022 共通テスト 数学IA 第4問

 2022年 1月16日実施の共通テスト 数学IAについて、大幅難化と言われていたり、思考力重視に偏重しすぎと言われたりしていますが、本当にそうでしょうか。確かに、これまでのセンター試験等に比べると、問題の作りが雑のように思えました。(コロナ禍により、作成者たちの会議や意志疎通が少なくなった等でしょうか。) また、表面的には思考力重視に見えたかもしれませんが、しっかりと数学の基礎力がある人は十分に解ける問題であると思います。

 残念な点は以下のような点です。
・思考をさせるという点では数学によって明確化される思考力を問う問題よりも、通常の思考力を問うような問題がちらほら見られたこと。

・問題の作りがやや雑というのは、数学的思考力を問う際に、得点される1つの個所で、ある簡単なものを問い、同種の力を問う問題が続いたかと思うと、同じ単元で問うべき他の複数の力を一度に使わなければならない問題もあり、もう少しばらけさせねば十分に問えないだろうという点。

・別の力を問えばよいものを同じ力を単に取り扱う要素の数を多くするという形を用いている点。

おおまかに、これらの点が目立ったように思います。

大問ごとにみてみます。今回は第4問

第4問
 不定方程式についての問題です。これまでは「互除法を使う」ことで1つの整数解を求める問題が多く出題されていましたが、今回は互除法の基礎である「割り算の表し方」と不定方程式の関係です。互除法を使わないため、解き方を学んできた人は苦戦したでしょうが、理屈を学んできた人にとっては解きやすい問題だったと思います。

(1)のはじめに「5の4乗を2の4乗で割った余りは1に等しい」とありますから、この文言を式で表すことから始まります。式で表すといっても

5^4÷2^4 = x ・・・1 (5^4は5の4乗、2^4は2の4乗を表します。)

ではありません。これは小学生の表し方です。中学生で割り算を文字式で表すときにはじめて学ぶ「積と余りの和で表す」つぎのような形式です。

5^4=2^4k+1

 割り算をこのような形式で表すことで、等式として扱えます。等式になったことにより、両辺に掛けるとか、移項とか、様々な技術が使えるようになり、また移項等にって式の形が変わることで、他の性質を式から読み出すことができるようになります。今回の問題は第4問ほぼ全てでこの見方が使われます。
 この形式から問題文にある式の形に整理して、必要なものを計算し、あとは通常の不定方程式の取り扱いで(1)は解けます。

(2)は問題文のとおりに計算を行っていけば終わります。

(3)は問題文の誘導に邪魔された人がいるかもしれません。誘導がやや細かなことに関わりすぎているようにも思います。けれども、(2)で求められた式を誘導部分に読み進む前に割り算の形式に整理してしまっていた人は、惑わされなかったでしょう。(3)のはじめに

 5^5x-2^5y=1

という式が出て来ますから、この時点で「不定方程式と割り算の関係という基礎」を意識して(3)の最後の式を

5^8=2^5(2^3m^2+m)+1

という割り算の形式に変えてしまっていれば、そのあとの誘導分も式を見ながら確認するだけで済みますので、惑わされないでしょう。
 ここまで来ていれば、(3)はちょっと計算しなければなりませんが、難なく解けるでしょう。

(4)もここまでと同じ枠組みの問題ですが、全く同じでは計算が重くなりすぎます。このことは、ちょっと手を動かせば判断できますので、その時点で方針を変えるべきでしょう。方針を変えると言っても、計算を軽くするために変えるだけで、議論の本筋は変わりません。
 (4)のはじめにある「11の4乗を2の4乗で割ったときの余りは1に等しい」ということを表した次の式

 11^4=2^4s+1

これを両辺2乗してしまうのが、(1)から(3)の流れですが、これをやると「11の4乗」を計算する必要があり厄介です。計算力のある人は、このまま進み、通常の不定方程式の取り扱いで解き切ります。
 計算力の無い人は例えば 11^2=2^3・15+1 くらいから始めて両辺2乗して 11^4=2^4(2^2・15^2+15)+1 と式をまとめることで11の4乗の計算を回避できます。
 「この後も915の2乗をどう回避するか」や「まず一部だけを求めて、他の困難な個所は保留しておく」という着目の集中などを行って計算回避を試みます。
 11^4や915^2を苦なく計算できる人は、このようなことをする必要はないでしょう。大学入試の問題で、たかだか小学生で学んだかけ算をする計算力の差で得点が変わってしまうような問題になっているのには疑問を感じますが。

第4問も完答は難しいかもしれません。特に数IAの整数の単元を「整数を「和の形式」と「積の形式」その混合の「割り算の形式」で表したときの式の形とその性質に関する学習」として全体像を集約させるように学ぶのではなく、「公約数や公倍数、互除法や不定方程式の解き方」などの個々の解き方の集まりとして学んだ人ははじめから戸惑ってしまうかもしれません。
 とはいえほぼ「割り算の形式」という問題の作りですから、本当に基礎的な問題と言えます。
 このような視点見てみると(1)から(3)までは計算がやや必要なので12分から15分くらいで完答できるでしょう。(4)は計算力のある人や時間が大量に余った人はゴリ押しで解けるでしょうが、そうでない人は解き切るのは困難です。
 (1)から(3)を解いて15点を得点するというのは普通の人が基礎を十分に学んで到達できる点数でしょうか。
ここまでで、基礎力がしっかりあると思われる受験生の、採りたい得点と時間
第1問 30点 12分
第2問 18点から24点(上位校狙い) 15分から18分(合計 48点から54点 27分から30分)
第3問 18点から20点(上位校狙い) 15分から16分(合計 66点から74点 42分から46分)
第4問 15点 12分から15分(合計 81点から89点 54分から61分:)

選択問題を 第3問・第4問を選んだ人の合計点と得点
 81点から89点
  (89点は上位校を狙う人)
 54分から61分
  (第1問にもう少し時間を使ってしまうかもしれません)

 各予備校の平均点と比べると随分高い得点です。この81点というのは特に地頭の良い人や数学センスのある人を想定していません。普通の頭の人が、普通の努力をしたときに到達できる得点と考えています。問題は、学び方と練習のしかたです。これらについては後に総括としてまとめてみたいと思います。

ここでいう「普通の頭の人」というは、大学受験をする人の中で普通ということです。具体的には、中学生の頃の数学の偏差値が58くらいの人というのを想定しています。

「普通の努力」というのは、例えばつぎのような勉強時間です。
 高校1年から高2の夏まで:毎日45分から1時間くらいの自宅学習
  (数学に割り振る時間は15分から30分くらい。)
 高2の夏から高3の夏まで:毎日1時間半から2時間くらい
  (数学に割り振る時間は30分から45分くらい。)
 高3の夏休み:かなり頑張る唯一の期間で1日に6時間から8時間くらい
  (数学に割り振る時間は1時間半から3時間くらい。)
 高3の2学期以降:毎日3時間から4時間半くらいの学習
  (数学に割り振る時間は1時間から1時間半くらい。)
休日はもう少し増やしてもよいでしょうが、倍もあれば十分でしょう。これ以上やると、勉強が雑になります。雑な勉強では基礎を使う力はほとんど伸ばせません。また「やったのにできない」感じがして自信もなくなってきて、さらに伸びなくなります。

(スクラムnext 田中克典)

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