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勉強トピックス

高校数学

高校数学 2022 共通テスト 数学IA 第5問

 2022年 1月16日実施の共通テスト 数学IAについて、大幅難化と言われていたり、思考力重視に偏重しすぎと言われたりしていますが、本当にそうでしょうか。確かに、これまでのセンター試験等に比べると、問題の作りが雑のように思えました。(コロナ禍により、作成者たちの会議や意志疎通が少なくなった等でしょうか。) また、表面的には思考力重視に見えたかもしれませんが、しっかりと数学の基礎力がある人は十分に解ける問題であると思います。

 残念な点は以下のような点です。
・思考をさせるという点では数学によって明確化される思考力を問う問題よりも、通常の思考力を問うような問題がちらほら見られたこと。

・問題の作りがやや雑というのは、数学的思考力を問う際に、得点される1つの個所で、ある簡単なものを問い、同種の力を問う問題が続いたかと思うと、同じ単元で問うべき他の複数の力を一度に使わなければならない問題もあり、もう少しばらけさせねば十分に問えないだろうという点。

・別の力を問えばよいものを同じ力を単に取り扱う要素の数を多くするという形を用いている点。

おおまかに、これらの点が目立ったように思います。

大問ごとにみてみます。今回は第5問

第5問
 選択問題(第3問、第4問、第5問)の中で、いちばん得点しやすい問題だったと思います。重心の性質、メネラウスの定理と方べきの定理(円関係の相似)をそのまま使う問題でした。第3問や、第4問のように、ある手法の基礎となっている事柄を使わないため、解きやすいと感じた人も多いのではないでしょうか。ただし、これらの定理を使う図形がどんどん変わることや、図を書きづらいことなどが、やや困難にしていたでしょう。

(1) 問題文を読み進めながら図を描き、条件を書き入れて、ア、イはすぐの解けます。ウ、エ、オについてはメネラウスの定理ですが、左辺がBP/APという分数の形で与えられていますので、メネラウスの定理やチェバの定理と結びつけやすいと思います。
 カ、キ、クも同じですが、どの図形に使うかがやや見つけづらいかもしれません。
 ウからクができていれば、この式を代入してケが解けます。
 ここまで7分くらいでしょうか。

(2) (1)の図に条件を書き込みながら読み進めますが、場合によっては書き直す必要があるかもしれません。
 方べきの定理で、コ、サが解かれます。方べきの定理は覚えるのが面倒という人も多いのですが、基本的に相似ですから、方べきの定理を覚えずに相似を使っても問題ないでしょう。相似の方が解ける幅は広がりますから、むしろ覚えない方が良いかもしれません。コ、サの情報を得たことで、この情報と矛盾した図を描いていた人は、また図を書きなおした方が良いでしょう。
 シからチは、コ、サで分かった情報を、比の表し方や相似を使って長さに反映させて(1)ケの式に代入することで解かれます。
 そしてまたメネラウスの定理でツからナまでとなります。
 (2)も7分くらいでしょう。
(3)別の条件でこれまでと同様のことをする、という点では第3問(3)(4)や第4問(4)と同様ですが、これらに比べて圧倒的に整理のやり直しが簡単です。
 とはいえ、AD/DGを見てメネラウスやチェバと考えてしまう人は苦戦したかもしれません。「分数は比の表し方の1つだ」という基礎を持っている人は(比の値として小学生で学んだもので、中3の相似でも使い、三角比でも使いました。)、AD/DGはAD:DGの比について求められていると分かりますから、AD:DGを s:1-s などと文字で置いて(1)をもう一度実行すれば解けます。
 (3)で5分くらいでしょう。

第5問は完答したい問題でした。
ここまでで、基礎力がしっかりあると思われる受験生の、採りたい得点と時間
第1問 30点 12分
第2問 18点から24点(上位校狙い) 15分から18分(合計 48点から54点 27分から30分)
第3問 18点から20点(上位校狙い) 15分から16分
第4問 15点 12分から15分

第5問 20点 19分

選択問題を 第3問・第4問を選んだ人の合計点と得点
 81点から89点
  (89点は上位校を狙う人)
 54分から61分
  (第1問にもう少し時間を使ってしまうかもしれません)

選択問題を 第3問・第5問を選んだ人の合計点と得点
 86点から94点
  (94点は上位校を狙う人)
 61分から65分

選択問題を 第4問・第5問を選んだ人の合計点と得点
 83点から89点
  (89点は上位校を狙う人)
 58分から64分

 各予備校の平均点と比べると随分高い得点です。これらの得点は特に地頭の良い人や数学センスのある人を想定していません。普通の頭の人が、普通の努力をしたときに到達できる得点と考えています。問題は、学び方と練習のしかたです。これらについては後に総括としてまとめてみたいと思います。

ここでいう「普通の頭の人」というは、大学受験をする人の中で普通ということです。具体的には、中学生の頃の数学の偏差値が58くらいの人というのを想定しています。

「普通の努力」というのは、例えばつぎのような勉強時間です。
 高校1年から高2の夏まで:毎日45分から1時間くらいの自宅学習
  (数学に割り振る時間は15分から30分くらい。)
 高2の夏から高3の夏まで:毎日1時間半から2時間くらい
  (数学に割り振る時間は30分から45分くらい。)
 高3の夏休み:かなり頑張る唯一の期間で1日に6時間から8時間くらい
  (数学に割り振る時間は1時間半から3時間くらい。)
 高3の2学期以降:毎日3時間から4時間半くらいの学習
  (数学に割り振る時間は1時間から1時間半くらい。)
休日はもう少し増やしてもよいでしょうが、倍もあれば十分でしょう。これ以上やると、勉強が雑になります。雑な勉強では基礎を使う力はほとんど伸ばせません。また「やったのにできない」感じがして自信もなくなってきて、さらに伸びなくなります。

(スクラムnext 田中克典)

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