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高校数学

高校数学 2022 共通テスト 数学IIB 総評

 2022年 1月16日実施の共通テスト 数学IIBについて、多くの受験生が解いたと思われる第1問、第2問、第4問(数列)、第5問(ベクトル)をそれぞれ見て来ました。

基礎力がしっかりあると思われる受験生の、とりたい得点と目標となる所要時間 は次のようなものでした。

第1問 27点 13分
第2問 27点 10分から15分 (合計 54点 23分から28分)
第4問 16点 12分 (合計 70点 35分から40分)
    難関大志望者は 20点 15分(合計 74点 38分から43分)

第5問 20点 15分 (合計 90点 50分から55分)
    (難関大志望者は 合計 94点 43分から58分)

 最初に指摘した点は次のようなものでした。
 数IIBの問題は数IAに比べて数学の基礎力をよく問える問題だったと思います。基礎力とはいえ「基本的なパターンで解く」というようなパターンへの反応というよりは「基本的な理解」による基本的な判断や確認ができているかということに重点があるようにも思えました。

 問われている思考力ですが、数学的では基礎的なものであり、地頭のよさやセンス、処理能力も多くの問題ではそれほど必要なものではないように思います。
(第1問[2](4)は情報処理能力等で差が開きます。)
 具体的には「図やグラフで視覚的に表されたものが数式でどのような特徴を持って表されるか」、その逆の「数式で表された特徴が図やグラフではどのような特徴をともつか」が中心となっています。
 また第4問(2)は「グラフを用いて確認しながら進む」などの「丁寧で慎重な取り扱い」が必要でした。これも、数学を取り扱ううえでも、IT技術のエラー確認や高エネルギーであったり目に見えないミクロな細菌や遺伝子を扱う理工系でもこれまで以上に必須な力ですから、これらを学ぶことになる大学進学のための入試で問いたい力であることは納得できます。もう少しこのような意図を持った問題は多くても良いのではないかとも思います。

 以下は数IAの総評でも述べたことですが、「例題を学んで、同じように解く練習をする」とか「問題を繰り返し解いて、解き方のパターンを覚える」といったような勉強をしていた人は苦戦したのでしょう。

 数学というは元々そのような構造をしていませんから、学び方の問題ともいえます。
 数学の構造というのは「基礎理論」を学び「その基礎理論を個々の具体的な問題に適用する」という構造をとっています。基礎理論というのは、教科書では各テーマのはじめに書かれているものです。半ページくらいであったり、長い場合は2ページくらいです。その後にある例題というのは、基礎理論の適用のしかたの”例”であって、練習問題を解くための例ではないとも言えます。はじめに学んだ基礎理論を個々の問題に使っていく例を示している感じです。この段階で学習者は「どうして、その基礎理論をそのように使おうというアイデアが出てくるのか?」などを学ぶべきですし、分からない場合は教師に説明を求めるべきでしょう。そうして例題の次にある練習問題では「同じように解く」のではなく「適用するプロセスを、どうしてその動機が出てくるのかというアイデアが出てくるところから同じように体験する」という意識学ぶ。このような学び方が数学の構造ではないかと思います。
 このように考えると「例題を学んで、同じように解く練習をする」とか「問題を繰り返し解いて、解き方のパターンを覚える」という勉強は、適用後ばかりに着目した学習になってしまっていると言えるのではないでしょうか。

 このような目で見れば、しっかりとした数学の基礎を問うた問題であると思います。おそらくは問題を作成した委員や大学教授は、非常に基本的なことを問う問題と考えられるでしょう。それなのに平均点が低いのは、教える側の教師や練習する側の受験生にこのような意識が欠けていたことや、数学を「決まった問題の解き方を学ぶ学問」という受験数学のみに通用する考え方によるのかもしれません。そして、このような学び方や教え方になってしまっていることが多いというのが、平均点の低さの証なのではないかと思います。共通テストは、このような使えない数学を教えるのを是正しようという試みの変化でしょう。

 大学教授にとって、数学は現象や物事を記述するためのものであり、数学という形式で記述することで複雑に絡み合っていたものや、人間の頭では処理しきれないものがほどけていくものという感じではないかと思います。そして、このように数学を使うとき、数学は使えるものになるのだと思います。大学教授たちは場合によっては数学の抽象的なものを対象として、場合によっては社会や自然の現象を対象として基礎理論を適用しています。受験生の場合は、同じ枠組みで対象が限られた範囲で出題された問題であるだけだと考えられのではないでしょうか。このように考えたとき、今回の共通テストはしっかりと基礎的な内容であり、さらに活用力に向けた方向へのシフトと考えられます。そのため、悪問ではないと考えるのです。

 さて、このような学習で学んだ場合、おそらく普通の頭の人が採れるであろう得点というのが、ここで書いた得点です。

合計 90点 (50分から55分)
難関大志望者は 合計 94点 (43分から58分)

ここでいう「普通の頭の人」というは、大学受験をする人の中で普通ということです。具体的には、中学生の頃の数学の偏差値が58くらいの人というのを想定しています。

「普通の努力」というのは、例えばつぎのような勉強時間です。
 高校1年から高2の夏まで:毎日45分から1時間くらいの自宅学習
  (数学に割り振る時間は15分から30分くらい。)
 高2の夏から高3の夏まで:毎日1時間半から2時間くらい
  (数学に割り振る時間は30分から45分くらい。)
 高3の夏休み:かなり頑張る唯一の期間で1日に6時間から8時間くらい
  (数学に割り振る時間は1時間半から3時間くらい。)
 高3の2学期以降:毎日3時間から4時間半くらいの学習
  (数学に割り振る時間は1時間から1時間半くらい。)

 このくらいの時間で、視点がズレた学習でなければ、先ほどのような得点はいけるものと考えられます。

(スクラムnext 田中克典)

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