2学期に始めたいこと

勉強トピックス

高校数学

高校数学 2023 共通テスト 数学IIB 第1問

 2023年 1月15日実施の共通テスト 数学IIBは、数IA同様、昨年度に比べてかなり易化したようです。IAとは違い、IIBでは昨年多く問われていた基礎的な力が、今年度はほぼ問われなくなっていますので、やや問題作成の方針が変わった様にも思えます。

 数学では、与えられた状況を「どのような式で表現し」「その式をどのように変形し(目的が明確な場合もあれば、とりあえず整理してから判断するための暫定的な変形もあります。)」、また「その式を解釈して特徴を読み取る」ことが行われます。昨年度の問題では、式の表現から読み取りまでの一連の流れを問うように作れていましたが、今年度ではこのほとんどが問題文により指定されていました。
 「数学を活用する」ことを考えた場合、中心的な扱い方となるこの流れが問われず、問題文により指定されることで、思考力または活用力を重視するという意図は薄くなったように感じました。

このほか、数IAと同様に「判断すべき条件の精密さが減ったこと」も、易化させた原因に思います。昨年度の問題では、条件の大小関係を丁寧にと扱う必要がありましたが、今年はこのタイプの設問でも、それほど丁寧に扱わなくても正解となる問題になっていたように感じます。
 数値で計算するものも軽くなりました。やはりこのような易化は、賛成です。数値の計算などは小学生の技術ですから、大学入試で合否にかかわる要素とすべきではないと思うのです。

大問ごとにみてみます。今回は第1問

第1問 [1]
アイ:x=π/6 と x=2π/3 でのsin(x)とsin(2x)の大小関係です。代入して値が求められますから、解きやすいとも言えます。単位円等から値を求めずに大小関係を把握した方が楽で時間も短くて済みます。とはいえ、それほど時間は変わらないでしょう。2分くらいでしょうか。

ウエ:sin(2x)とsin(x)の大小関係を調べますが、そのために sin(2x)-sin(x)について調べることが設定されます。大小関係を調べるためには、この引き算が正になるか負になるかを判断します。この判断には和の形より、積の形の方が判断しやすいですから、積の形に変形するために因数分解します。この変形も問題文で指示されます。(「かけて正 or かけて負」で判断した方が、「足して正 or 足して負」より判断しやすい。)
 また、sin(2x)とsin(x)では変数が2xとxであり、一致していませんので、式が扱いずらくなっています。そのため x に合わせるか、2x に合わせるかを選んで整理しますが、これも問題文により指示されます。xに合わせますから、倍角の公式(または加法定理)により2xをxに合わせ、因数分解して解答に至ります。2分あれば十分でしょうか。

オカキ:さらに因数分解により得られた式から、欲しい情報を得るための読み取りまで問題文で指示されます。単位円等を描いて2つの不等式がともに満たす範囲を把握すれば解答できます。やはり2分あれば十分でしょう。ただし、この判断を苦手とする高校生は意外に多いようですから、できたかどうかは別れたと思います。

 ところで、ウからキのような指示があっては「式がなぜ扱いずらいのか」「どのような形であれば、欲しい情報を得やすい形になるのか」等の「応用のための基本」が問えないでしょう。

クケ:sin(3x)とsin(4x)の大小関係に話が進みます。このときsin(α+β)-sin(α-β)=2cos(α)sin(β) によって扱うという提案があります。昨年度であれば、この提案がなく、受験生の多くはウからキと同様に加法定理等で扱い、これにより解答に時間がかかる、というような感じだったと思います。けれども、今年度はウからキと同じ扱いではなく、別の方針で扱うようにと提案があります。さらに易化されています。提案された
sin(α+β)-sin(α-β)

sin(4x)-sin(3x)
を見比べて α+β=4x, α-β=3x とすることを解答者の判断に任せてもよいとも思うのですが、これも問題文が指示します。連立することでαとβが決定し、解答に至ります。何をするかの指示まで端的に与えられますから、実質連立方程式を解くくらいです。多く見積もって2分くらいでしょうか。

コサシスセ:ここから先は右辺のcos(α)sin(β)の積による正負の判断になります。やはり単位円を描いて該当の範囲を探します。α=7x/2ですから、αの最大値は7π/2=2π+3π/2となり、単位円の2周めも範囲に含みますので、注意して扱わなければなりません。そのためコは解答できても、スセで間違ってしまった受験生もいるのではないかと思います。やや丁寧に扱う必要がありますから、2分ほどかかるかもしれません。

ソタチ:さらにsin(2x)とsin(4x)の大小関係も含めることになります。クからセと同様に行えば計算は軽いため、この問題に手を付けられる人であれば、2分あれば解答できるでしょうが、やはり範囲の特定を丁寧に行う必要がありますから、解けなった受験生もいるでしょう。このような三角関数の範囲は、丁寧に取り扱う習慣が必要なだけで基本的な内容です。確実に扱えるようにしておくべきでしょう。

ここまでで、最大12分くらい使ってしまうかもしれません。


第1問[2]
ツ:対数で一番初めに学ぶことですが、どの単元でもこのような最も基礎的なことができない受験生がある程度います。このような点を意識して毎年のようにこの手の設問があります。ただし、今年度の対数は、対数の計算によって解決することもできますから、他の年度に比べれば解けた受験生も多かったと思います。

テトナ:基本的な対数の計算です。ツと合わせて1分くらいで解答したい問題です。

ニ:対数の問題で有理数、無理数が関わってきたことに動揺した受験生もいたかもしれませんが、誘導に従えば基本的な対数の計算の問題です。ただし、整数の考え方を使います。

ヌ:ニと同様の式変形と考え方で解答できます。ニと合わせて2分くらいで解答したい問題です。

ツからヌまでで3分くらいかかるでしょうか。

 試験時間を考えたとき、第1問をどのように考えるか。
アからエ:確実に解きたい問題です。(4点) 4分

オカキ:三角関数の範囲の把握。苦手な高校生が多い問題です。(4点) 2分

クケ:確実に解きたい問題です。(2点) 2分
コ:範囲の把握。とはいえ、ここは確実に解きたい。(2点)
サシスセ:範囲の把握ですが、範囲の最大値に注意が必要。(2点) 2分

ソタチ:範囲の把握が解けるかを分けるでしょう。(4点)

ツからナ:確実に解きたい問題です。(7点)  1分

ニヌ:対数の計算としては基本ですが、整数問題の判断を使います。(5点)2分

第1問全体で15分ほどかかるでしょう。多いように感じますが、やはりこのくらいの時間はかかってしまうでしょう。

確実に解きたい問題で 15点(50%)

範囲の把握のオカキもできて 19点(63%)

次に解きやすいのがニヌ。これを加えて24点((80%)

三角関数の範囲の把握が丁寧に扱えればサシスセができて、26点(86%)

ソタチは、見た瞬間に時間的に避けるという選択もアリかもしれません。ソタチを避ければ12分か13分くらいで第1問を終えられるでしょう。ただ配点が4点ありますし、やってみるとそれほど時間のかかる問題でもありません。範囲の把握が丁寧にできる受験生はとりたい問題だと思います。

(スクラムnext 田中克典)

このページのトップヘ