2学期に始めたいこと

勉強トピックス

中学数学

数学の思考力?のトレーニング

 数学でもどの科目でも、思考力重視型または知識活用型の問題が増えて来ています。中学入試でも、高校入試でも、大学入試でも。定期テストでも。

 このタイプの問題を見ていて、やはり大学入試の多くは各科目の的を射た本質的な出題が多いように感じます。これはもちろん、その科目を実際に使って研究や技術開発をしている大学教授が作っているのですから、当然と言えば当然。私のような者が評価するのは身分不相応とお叱りを受けてしまいそうです。

 ところが定期テストとなると、高校でも中学でも的を射ていないような問題も少なくないように思います。これは、教科書よりも、一緒に使われている問題集の方に問題が多いようにも感じられます。

 的を射ていないというのは、いわゆる「発想や工夫」を必要とするものです。数学なら「数学を活用する問題」と「発想や工夫が必要な問題」は、「科学技術」と「技術」の違いと似ています。

 現代では技術といえば「科学」を使った「科学技術」を思い浮かべがちですが、「技術」には「科学」を必要としないものも多くあります。もちろん全く必要としないというのではなく、日常生活や職人としての経験から培われる科学的なものは使うでしょう。それらをどう組み合わせるかなどのアイディア・工夫によって生み出されるのが「技術」です。これらの技術はもちろん価値のあるものですし、必要なものであり、これにより大きな恩恵をもたらすものもあると思います。
 「科学技術」は、最先端または現代の体系的な科学を使って作られた技術という点で、これらと分けます。むしろ熟練などはこちらの方が少なくて済むでしょう。それが体系化ということであり、「科学」の特徴でもあるでしょう。

 「技術」と「科学技術」に分けて考えると、これから大人になっていく子供たちが数学で鍛えるべきは後者の「科学技術」なのではないかと私は思うのです。

 何かを考えるとき、それが活用であれ工夫であれ、自分がすでに持っている知識をベースに考えることになるでしょう。
 数学であれば、数学の基礎を各問題に応じて適用すれば、あれこれ考えずに自然と問題は解決します。そうして簡単に扱えるようにできるのが、数学の力です。基礎の適用により絡みあっていた複数の要因を解きほぐしてしまえるのです。考えたりなんだりするのであれば、基礎を適用して解きほぐしたあとにすべきでしょう。簡単に扱えるようになるからこそ、より複雑な問題も扱うことができるようになり、さらに体系化が進み、さらに複雑な問題が扱えるようになり、そうして気が付けばある程度は人間の代わりができるようなAIまで進歩してきたのでしょう。これが「科学技術」を意識したときに鍛えるべき思考力・活用力ではないでしょうか。
 基礎を適用するとスルスルっと解けてしまうけれども、基礎を適用しそこなうとなかなか解けない。そんな問題が数学の活用力を問う問題としては本質的でよい問題だなぁと感じるのです。

 逆に今持っている基礎を適用してもスルスルっとはいかず「うまいアイディア」のような工夫が解けるかどうかの分かれ目となるような問題は、的を射ていないのではないかと思うのです。このような問題がちらほらと見られるのが、中学生の数学です。十分な数学の基礎を与えていない段階で考えさせるような問題はこのタイプが多いでしょう。

 このような問題を解く練習を繰り返したところで、数学の基礎を適用するトレーニングにはなっていないことが多くあります。うまく思いついたとしても、長い歴史を通して体系化が進んだ数学の力に比べれば、個人の工夫などは大したものではないことがほとんどなのです。
 けれども、このタイプの問題が解けるのが「数学ができること」と考えてしまわれがちな場合も多くあり、また解ける本人も「自分は数学ができる」と思い込み、解けない人は「自分は数学が苦手だ」と思い込んでしまうことになっているように思います。
 ところが、このタイプの問題が解けるからと「数学が得意だ」という人もそのほとんどが高校2年生くらいで数学を難しく感じるようになって来ることが多いように思います。扱う問題の複雑さが増し、数学基礎の適用なしには困難になり、工夫では扱いきれなくなるのがこのあたりの学年です。けれども、中学1年から工夫重視の学習で適用のトレーニングを行ってきていないために、軌道修正は今更難しくなっている場合も多くあるように感じます。
 逆に、工夫が必要なタイプの問題はとけなくても、適用を教えてトレーニングした人は、高2くらいから数学が難しくないと感じ始める方が多いようです。数学の基礎が体系化が進むのですから、その適用をトレーニングしてきた人にとっては当然と言えるものでしょう。

 このような数学の勉強の違いに自分で気づく人もいるでしょうが、できれば指導して引っ張る人がいれば、将来的には「数学を使える人材」がもっと多くなるのではないでしょうか。工夫よりも、基礎の適用を重視する。これが数学の思考力、少なくとも将来数学を扱える力を養う中学生からの勉強スタイルのように思います。

(スクラムnext 田中克典)

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