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中学数学

高校入試問題レビュー 2022 埼玉県 学校選択問題 数学 第2問・第3問・第4問・第5問

 2022年 2月24日は埼玉県公立高校の入試でした。
大学入試と同じく、年々少しづつ難化していっている公立高校入試ですが、まだまだ高校入学後に学ぶ内容に比べてギャップが大きいため、今後も少しづつ難化していくことが予想されます。今年度の入試について見てみたいと思います。

 今回は、数学 学校選択問題 第2問・第3問・第4問・第5問です。

学校選択問題
第2問
(1) 直角二等辺三角形と円を使った作図でした。
 小学生で初めて覚えることになった三角定規の形は小学校で角度を学び、中学で辺の比を学び、高校で三角比・三角関数と使い続けます。ところで、三角定規の2つの形ですが、わざわざ覚えるほどに特徴的な形なのですが、どんな特別な形なのか理解している人は多くはいません。数学では、図形を扱うときなどには、各基本図形の特徴をまず理解している必要があります。その特徴を使って様々なことを行います。今回の作図は直角二等辺三角形と円の特徴から着想されるでしょう。多くの人は何となく着想するでしょうが、できれば明確な論理をもって着想できるように練習を積んでいるとよいと思います。
 高校では、図形はこれらの特徴を方程式で表わして、関数やベクトルとして扱っていきます。中学までのように「目で見て補助線を引くとうまいことできる」というのでは、複雑なことを扱うのが難しくなりますから、1年生の数学までです。図形も方程式として扱うことで、より複雑な図形を扱うことができるようになります。その延長に現在のIT技術があります。これらの基礎として、解けるだけではなく明確に特徴を理解していることが求められていると思います。

(2) 問題文の指示に従って代入しながら座標を書き込み、そのグラフを見ながら問題文で求められている性質を表す式を作れば、解ける式ができあがっています。
 「2つの直線が直角に交わる」ということを塾などで教わっていた人は問題文にある直角であることを直接式にできたと思います。また、点EがACの中点であることも式にできたと思います。けれどもこれは高校で学ぶ方法です(高校生でも今回の問題はこの方法を選択すべきではありませんが)。この問題では、この方法を採った人は面倒な計算を行うことになります。
 中学生としては、垂直二等分線の性質、またはひし形の性質、または二等辺三角形の性質であることを使う問題でしょう。どれを使っても、AB=BCが分かります。BCの長さを表す式を三平方の定理(BCを斜辺とする直角三角形)で表すと、解くべき式ができあがります。こちらの式は解くのが楽な式になっています。知識は多ければ良いわけではありませんね。使える形で身につけておくべきものですね。

第3問
 さいころ2つを振る確率、場合の数の問題。
さいころと座標、関数を組み合わせた問題で、戸惑った人もいると思います。けれども確率や場合の数で身につけるべき根本は「整理のしかた」ですから、これを練習してきた人はそれほど戸惑わなかったかもしれません。
 さいころ2つは通常は表に整理していきますが、ここでは座標上の点に整理することで楽に把握できます。この整理のしかたは思いつくとすれば難しいかもしれませんが、問題文で述べられる順にグラフ上に点を打っていくことで、比較的自然と着想を得られるでしょう。特に、「整理していくときには、問題文を読みながら、どんな設定かを指示されるごとに、いくつかの事象を具体的にやってみながら、整理する」ということが、基本的な習慣になっている人は、特に難しい問題ではないでしょう。(このような習慣を得られるように日々の練習は行われるべきものです。)

(1) 90°となる点を探す問題です。円周角の定理から直径の円周角によって90°となる点が2か所ありますので、これ厄介だったかもしれません。

(2) アは2点を通る一次関数の問題です。座標として扱うことができれば難しくはありませんが、確率だと思い込んでいると難しく感じる人もいたかもしれません。
 イは座標上にまとめてある場合の数から、問題文が指定する点を探せば良い問題ですから、問題の整理がされていれば難しくはないでしょう。

(3) やはり問題文を読みながら整理ができていた人は、面積を把握することで解けます。けれども、1つ1つの面積を求めるのは時間もかかります。時間があればこれでもよいですが、底辺と高さの把握だけで判断すれば5分くらいで判断できるでしょう。模範解答のように等積変形を使って直線を描いても良いでしょうが、”思いつけば”という感じでしょう。とはいえ、やや厄介な問題です。

 この問題、たとえば点Bが(6,5)などであれば(3)も厄介な問題ではありません。数学は見た目がそっくりでも、ちょっと違うだけで解き方は変わります。解き方を学ぶ学習が功を奏さない理由はここにあるともいえるでしょう。学校選択問題を解こうとする人や高校でも数学を使っていく人は、数学の特徴に合った学習をすることが重要ですね。

第4問
 円の接線の性質についての問題です。図にこの性質を書き入れながら進めることで、それほど困難なく解けるでしょう

(1) 円の性質(半径と中心)と、円の接線の性質(直角に交わる)ということを問題文を読みながら図に書き入れられていれば、直角三角形の合同条件が見つかっているでしょう。

(2) もう1つの円についても同じく、円の性質と、円の接線の性質、(1)で証明した角の二等分線の性質を、問題文を読みながら設定されるごとに図に書き入れていくと、あと一歩で解けるとこまで進みます。この段階で相似な図形ができているでしょう。
 次にRからOAに垂線を引いて直角三角形を作り三平方の定理を使うことで解かれますが、この垂線を引くのが「よくあるパターン」的なものを使えと言っているように感じますから、問題の作りには残念さを感じます。解くだけというのであれば、よくある形で、ほとんどの受験生は何度も練習を行っているでしょうから、この垂線を引いて三平方の定理を使うのは、それほど難しくないと思います。

第5問
 見た目の形式的には第3問と見た目は似ていますが、第3問ほど問題文を読みながらの整理は必要とされません。図形というものの性質と、場合の数というものの性質が違うのですから、当たり前と言えば当たり前ですが。

(1) 球を分割した立体の体積です。

(2) 四角錐の体積です。四角錐の体積ですから、まず底面と高さをどこにするか決めます。このとき、底面と高さが90°であることを考えればすればすぐに決まるでしょう。この時点で高さは分かります。
 底面は四角形ですが、面積を直接求められませんから、小さく分けて足すか、大きい図形から余分を引くかで求めます。どっちで求めるのかは、問題文を読みながら次のことが行われていれば、すぐに分かります。弧OBC上に点Dをとり、同時に円の特徴である半径ODを引くきます。Dが弧を二等分するため∠DOCの大きさも分かり、この段階で底面は二つの三角形に分かれています。この三角形の面積が求められれば底面積は解決です。三角形の面積を求められるかどうかは、底辺と高さが分かるかどうかをまず探すべきでしょう。この動機から高さを引けば直角二等辺三角形ができていますから、高さが分かります。底辺も分かっていますから底面積が求められます。
 比較的素直な処理で解ける問題です。

(3) 今回の学校選択問題の中で最も厄介な問題です。
 解き方は様々あるでしょうが、OECを底面とし、線分GFが1つの側面上にある三角錐を、GFを通りOECと平行な面で切っていく方針が楽でしょう。下の部分は相似の体積比で分けてそのまま使います。上の部分は頂点がAになるように高さの比から求められます。この方針の場合、元の三角錐の体積をつかって式をくくることができますので、計算も重くありません。問題はこの方針が時間内に思いつくかです。10年ほど前まではよく出題されていた図形の難問に比べれば思いつきやすい問題ですが、きっかけが、条件から直接的に導けるものではありませんから厄介です。過去の数学ではよく問われるような問題ですが、入試を「将来数学を使っていく人が数学を学ぶための1つの指針となる問題」と考えると、現代の数学の応用技術における扱い方から見て入試で広く多くの人に問うべきであるかは疑問を感じたりもます。

(スクラムnext 田中克典)

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